この小学校の都市伝説は、怪談好きな友人から聞いたものです。
元々、小学校の都市伝説というか、七不思議みたいなものって、どこにでもあるくらい、語られていますよね^^
私の通っていた小学校は、第二次ベビーブームと、住宅開発が重なって作られた為、開校10年ちょっとでした。
それでも何故か七不思議はあったくらいです。
トイレ、音楽室のベートーベンの肖像画、理科準備室の人体模型など。
それらを合わせて7つありましたが、必ずと言っていい程、入ってくるのは、プールではないでしょうか?
やはり、怪現象・心霊現象は、水に関わる事が多いですね。
今回は、小学校のプールにまつわる都市伝説です・・・
小学校のプール
これは、小学5年生の男の子が体験した話です。
使われない小プール
『夏休みの宿題は、なんでこんなに沢山あるんだろう。』
もう、夏休みも中盤、お盆のお墓参りも済ませた頃、東京近郊のK県Y市の外れに住んでいる健二は、毎年思う事を、今年も考えていた。
『折角の休みなんだから、もっと自由な時間を与えて、普段できない経験をさせてあげる。
そんな考え方があってもいいんじゃない?』
健二は、小学校からの『嫌がらせ』に対して、文句を言っていた。
確かに小学校の宿題は、嫌がらせのように多い。ドリルに日記に、読書感想文とか。
典型的な勉強嫌いの健二は、国語算数大嫌い。
体育と図工と理科の実験の為に、小学校へ行っているようなものだ。
でも、この時期で、すでに終わっている宿題がある。そう、夏休みの工作だ。
これだけは毎年気合いを入れて作っている。
誰よりも時間をかけて、凝った物を作っていると自負できる。
今年は、発砲スチロールを本体に、動力源をゴムで作った船!
どうやって、本体に動力をつければいいのか、本当に苦労した。
苦労して作っただけに、早く実験をしたくてたまらない。
健二が、そう思って真っ先に思い浮かんだのは、小学校のプールだ。
家の風呂じゃ狭すぎる。
近くに川はあるけど、あまりに汚すぎる。
苦労して作った力作を汚したくはない。
そうすると、実験できるのは、学校のプールしかない。
お盆の前後は、小学校で希望者向けに、プールの練習がある。
でも、今はお休みだから、誰も使っていない。
健二の学校には、大小2つのプールがある。
小さい方のプールなら、実験するのにちょうどよさそうな感じだった。
しかし、不思議な事に小さいプールは、今まで使っているところを、1度も見た事が無い。
この5年間で一度も。
そのプールは、脱衣所を出て、足を洗う塩素プールを出た、すぐ左手にあった。
いつも水は張ってあるものの、黄色いテープが張られ、
『使用禁止』
と書かれている。
『使えないなら作るなよ、作ったなら使えばいいのに。』
そう思ったが、水深は恐らく健二の膝くらいまで。
そんなプールを作った理由がわからない。
市の決まりでもあるのだろうか?
理由は分からないが、その使われないプールは、使ってはいけないらしく、ふざけて入ろうとした同級生が、先生に、無茶苦茶怒られているのを見た事がある。
ただ、唯一分かっている事は、健二の作った船の実験には、最適の条件と言う事だけだった。
日焼けした女の子
そして、真夏の太陽の日差しが、ギラギラと照りつけるある日、健二はいよいよ実験をしに、小学校のプールへ向かった。
健二は、成果に対するドキドキと、誰もいない小学校のプールへ侵入するドキドキが、入り混じり、妙な紅潮感に包まれていた。
学校へ到着すると、早速プールのフェンスを、乗り越えることにした。
お盆だからか、小学校にはあまり人影もなく、誰かに見られる事はなさそうだ。
フェンスの高さは2m位あるが、金網になっているから、乗り越えるのはそう難しくない。
『ガチャガチャ!』
と、音を立てながら、健二はフェンスを乗り越えた。
『さぁ、いよいよ実験だ~』
そう思い、小プールに張られた、黄色いテープをくぐった時だった。
何か視線を感じる。
『誰かに見られたか・・・?』
不安になって、健二はあたりを見渡してみたが、視界には誰もいない。
『気のせいか?』
そう思い、早速小プールの脇にしゃがみこみ、船を浮かべてみる。
なかなかだった。次に輪ゴムを回して走らせてみよう、そう思った時、やはり誰かの視線を感じた。
気配と言っても良い。
健二が振り返ると、フェンスの向こうに女の子が立っていた。
おかっぱ頭で、黒い服を着ている。
遠いのでよくわからないが、身長からすると、健二と同い年くらいか・・・?
顔の表情までは分からないが、明らかにやせ細った印象の子だった。
黒いワンピースから出ている手足と顔は、かなり日に焼けたようだ。
じっとこちらを見ている。
『やばい、当直の先生に告げ口するなよ!』
勝手に侵入しているだけに、心でそう願いながら、また視線を船に戻して、ゴムを巻き始めた。
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さっとゴムを巻いて走らせると、思ったよりも良い出来だった。
満足した健二は、さっさと帰ろうと思い、船を引き揚げようと腰を上げた。
その時、なんだか気になったので、改めて後ろを見てみた。
『わっ!!』
健二は思わず声を出しそうになった。
女の子がフェンスの内側に立っていた。
じっとこちらを見ている気がする。
『いつの間に・・・』
気味が悪かった。
健二がフェンスを乗り越えた時、人に見つからないよう、なるべく音を立てないよう気をつけても、結構な音がした。
『音もなく乗り越えた・・・?』
女の子は、ボーと立っているようにも見えるが、その距離は、何故か徐々に近づいてきている。
『なぜだ!どうやって進んでいるんだ!』
もう、この世のものではないと、直感した健二は、すぐに船を手にとって、反対側のフェンスから、外へ逃げようと思った。
さっと、船に目を向け拾おうと思った瞬間、暗くなった。
正確には、影が出来た。人の影。
『ハッ!!』と思い、振り返ると、目の前に黒い人がいた。
あの女の子だ。
立ったまま、上から健二を見下ろしている。
その顔には眼球はもはやなく、強烈な腐敗臭が漂っていた。
黒いと思っていた服は、水分を吸い過ぎて変色していたもので、肌の黒さも腐敗した、もと、肉だったものが変色していただけだった。
顔も、手も足も、全てが黒く、グチョグチョとしていて、嫌な汁が、『ポタポタ』と垂れている。
どう見ても、全身が腐りきっている。
完全に思考が停止した健二に、女の子が
『ニヤッ』
と、不気味に笑うと、太陽の日差しに、『キラリ』と矯正が光った。
健二は、頭がボーっとして、視界がゆらゆら揺れてきた。
不気味に笑う女の子は、スー、と両手を健二の首筋に伸ばしてきたかと思うと、ぐるりと首にからめてきた。
健二はその場で意識を失った。
気が付くと、健二は小学校の医務室で寝ていた。
見周りに来た当直の先生が、小プールの横で寝転がっていた、健二を発見したのだ。
船は小プールに浮かんだままで、あたりには何もなく、ただ、健二が横たわっていたのだという。
『軽い熱中症ね。』
先生は気が付いた健二にそういうと、
『プールへ勝手に入ったのね。あなた、よかったわね。それくらいで済んで。』
そういったかと思うと、独り言のように、ぼそっと言った。
『あの子、まだいたのね・・・』
まとめ
小学校のプールは、毎年夏の事故として、ニュースが取り上げている気がします。
小学生なら、まだまだ遊びたいし、やりたいこともあったはず。
友達と離れて寂しかったはず。
小学校のプールにまつわる話は、大体『連れて行こう』としますよね。
亡くなった子供たちには、そんな思いがあるのかもしれません。